「下手の考え休むに似たり」

これは素人将棋指しの間で,
「下手なあんたがいくら考えたところで,どうせたいしたこと思いつくはずもないし,休んでいるのとたいして変わらないんだから,早く指してよ。」 という意味で使われる言葉です。
誤解を恐れずに言えば,数学の勉強についても同じことが言えます。本来なら,1つの問題を何時間,場合によっては何日もかけて考えた方が,解けたときの喜びも味わえるし,思考力や忍耐力もつくので良いと思われるのですが,現実には生徒の皆さんは他の科目も勉強しなければならないし,スポーツや趣味やおデート…その他色々やりたいことがあるはずですから,そんなに1問に時間を割くことはできないでしょう。 塾生が問題に取り組んでいる時,そろそろ助け舟を出そうかと思って
「どうする?説明しようか?」
と持ちかけるとき,二つの思いが交錯します。
「自分で何とか解きたいという気持ちを大切にしてあげたい。それで達成感を味わってもらって数学のおもしろさをわかってもらいたい」
という気持ちと,
「定期試験や入学試験の数学でよい成績を収めることが目的であれば,考える時間をあまりとるのは得策ではない。これ以上考え続けることはその観点からは時間の無駄である。」という気持ちです。

実際,助け舟の申し出をあっさりと受け入れる(一見チャレンジ精神に欠けるとも見える)生徒の方が,数学の実力が向上するというのが実感です。数学の学習の本来的な方法ではないかもしれませんが,極端な話,数学の問題を読んで何を聞かれているのかを理解したら,まったく考える時間をとらずにひたすら解説・解答を読むのが最も効率的な勉強法だと思います。これはおもしろくないので,全面的には勧めていないんですけれど。で,どんな参考書にも載っているような基本的な問題の解き方などを全て反射的に思い出せるようになった上で,あとはヒマなときに,た~っぷり時間をかけて難問への挑戦を楽しむ,というのがベストかなと考えています。